死ぬことと見つけたり
- 作者: 隆慶一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/08/30
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- 作者: 隆慶一郎
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やはり面白い。2回目なのにまた熱中して読み切った。
本書は隆慶一郎の作品であり、葉隠をもとにした物語であり、上下巻が出ているが下巻は未完の作品である。
斎藤杢之介、中野求馬、牛島萬右衛門ら3人の物語である。
彼ら3人は本当に魅力にあふれており、その姿に痺れる。そして、その在り方に思わず身震いする。
その在り方の根っこにあるのは、杢之介の毎朝の日課にある。
まず毎朝、入念に死んでおくのである。できる限り事細かに、詳細に、リアルにである。
不思議なことにこと、朝これをやっておくと、身も心もすっと軽くなって、一日がひどく楽になる。考えてみれば、寝床を離れるとき、杢之介はすでに死人なのである。死人に今更なんの憂い、なんの辛苦があろうか。(中略)まるですべてが澄明な玻璃の向うで起こっていることのように、何の動揺もなく見ていられるのだった。おのれ自身さえ、その玻璃の向うにいるかのように、眺めることができる。
これをやっているからこそ、何の憂いもなく決断行動できるのだろう。
吉原でガラの悪い旗本連中がわざとぶつかってきて、因縁を吹っ掛けてきたときもそうだ。佐賀藩と己に対する侮蔑ととれる言葉を相手が言おうとした瞬間、杢之介は切った。そしてそれと同時に萬右衛門、求馬も切った。この一悶着は吉原の惣名主、庄司堪右衛門が仲裁を行い、杢之介を気絶させ治まった。気を覚ましてから杢之介はこの惣名主に2,3言ほど述べ関心した後、「水を浴びたいな」と述べる。将軍家の直臣を切ったため、死ぬために身を清めたいということだ。この潔さ。もちろん萬右衛門はすでに身を清めていた。
この鍋島武士らしい2人に比べて求馬は少し毛色が違って描かれている。
これは求馬の父の影響が強いのだろう。求馬の父は殿様に嫌われることばかり執拗に言い続けて、最後はそれが原因で腹を切った。
お前は武士の本文とは何だとおもっているのだ、と父が咎めるように云った。戦って死ぬことです、と求馬は答えた。それだけじゃ返事にならん。もっと具体的に云ってみろ。合戦で死ぬことです。求馬は叫んだ。可哀そうにな。お前は終世満足できないだろう。なぜならこれから先、少なくともお前の生きている間は、合戦なんかは起こりはしないからだ。合戦がなかったら、お前はどうするんだね。求馬は言葉につまり、父を睨んだ。
「武士の本分とは……。」
父が云った。奇妙にもどこか楽しそうだった。
「殿に御意見申し上げて死を賜ることだ」
もちろん合戦を望めるときに生きているのであれば、はじめに求馬が述べた武士の在り方でも父は否定しなかっただろう。しかし、そういう時代ではないと冷静に見つめた上で、どうすることが殿の、自分の藩のためになり、そして自分の在り方として満足できるものか考えた上で、実際に藩のためになることを述べ、自分の満足する生き方をして、死んでいく。そのためには殿に意見を申し上げる立場まで出世をしなければならない。立身出世といえば、己の欲を満たすような行為であり、武士としては見苦しい面がある。しかし求馬の父は
「わしは明けても暮れても、立身出世のことばかり考えて来た。気の遠くなるような、長い、辛い道だった。だが、見ろ。今日、わしは本望かなって、無事に武士の本分を果して死んでゆく。これほどの死がまたとあろうか。わしは天下の幸せ者だ。」
と述べて、心底幸せそうに死んでいった。そして、求馬は知らず知らずのうちに自分もそうやって死のうと考え、立身出世を果たした。
下巻でも、求馬がどうやって死ぬかは著者によっては描かれていない。しかし著者が残していた、粗筋には家法にてらすと大罪であることを犯し、藩のために死んでいったようだ。
この物語で描かれている3人は本当に魅力的で、いつまでもこの3人の姿を見ていたかった。
誰よりも死ぬことを恐れていない3人の死ぬ姿は本書では描かれていなかったが、描く必要もないほど本書を読んだ人の頭に魅力的な死人の姿を描いてくれた。
知らないうちに・・・
どこの宗教だよ、と思ってコメントにある神慈秀明会とやらのwikipediaを見て、こんな宗教があるんだなぁ。教祖はどんな人だよ、岡田茂吉?なんか聞いたことぐらいある気がするなぁ、とか思ってwikipediaを読む。
世界救世教?そんな宗教があるのか・・・と思って読み進めると「大本教の幹部であった岡田茂吉」とある。
なんだ大本教って、と思って読み進めると今度は出口なおという教祖にあたる。なになに・・・この出口さんは金光教に入ってたの?
金光教って何よ・・・と思って読むと「赤沢文治(川手文治郎)、後の金光大神」が教祖みたいだ。すると次の一文でようやくよく聞く名が出てきた。
なんだか、日本って無宗教って感じがしてたけど節操ないほどに色んな宗教があるんだな・・・。さらに神道十三派なんてのもあるみたいだし、特に神道系に多いのかな?
仏教系もいろんな宗派があったりするんだけど、仏教の方が身近というか生活の中の習慣に溶け込んでいる気がして身近な感じがする。もちろん神道系のものも生活に溶け込んでいるんだけど、なんかもっと深い部分で溶けこんでいて気づかない感じ。
仏教の方が経典、教義のようなものがあるから組織化しやすかったのはあるのかもしれない。一方で、神道にはそういったものがないので(というと語弊があるだろうけど)、個々人がいろんな宗教を作ってしまうのかな。
ただ神道は一応、皇室神道があり、皇室は日本の歴史でずっといたことを考えると、仏教の方が組織的に政治には関われていない気がする、なんて考えているところで「比叡山焼討ち」のことなんかを思い出した。
あの安土桃山時代なんかは仏教と神道はどんな関係にあったんだろうか。そもそも今現在も仏教と神道の関係がわからないけど、キリスト教やイスラム教ほど表立って政治に介入してこないのは、幸せなことと考えていいのだろうか。
塩野七生なんかはこういってる。
織田信長が日本人に与えた最大の贈物は、比叡山焼討ちや長島、越前の一向宗徒との対決や石山本願寺攻めに示されたような、狂信の徒の皆殺しである。
(中略)
不思議にも、非宗教とされている日本が、他のどの宗教的なる国よりも、イエス・キリストの次の言葉を実践しているのである
「カエサルのものはカエサルに、神のものは神に」
これも、四百年の昔に、大掃除をしてくれた信長のおかげである。あれで、殺しまくられたほうも頭を冷やし、殺しまくったほうも、怖れから免疫になれたのだ。そして、その後ともかくも四百年の間、無意識にしろ、この傾向は固まる一方だったのである。この四百年間の間政教分離の伝統を維持してきた国は、巧みにわが道を進んだ英国をのぞいて、他には一国もない。欧米諸国が現在にいたるまで、この問題で悩み苦しまされてきた実情を知れば、われわれのもつ幸運の大きさに、日本人がまず驚嘆するであろう。
- 作者: 塩野七生
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で、びっくりしたのがこの上記のエントリーの神慈秀明会を立教した、小山美秀子さん。この人のコレクションを展示するMIHO MUSEUMに行ったことがあったよ・・・。知らないうちに関わってたりするんだなぁ。
なにやら無駄に金をかけている施設で、有名な建築家*1が作ったらしいってことは聞いていたけど・・・まぁエントリーの人のようなことにならなかったのもまた、幸運か。
*1:イオ・ミン・ペイ
太っ腹?なブックオフオンライン
このエントリーに触発されて以来、言及されている本の中で興味を得たものについて読んでみようかなぁと古本を探していた。
で、
- 作者: トニー・ブザン,バリー・ブザン,神田昌典
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- 作者: トニーブザン,Tony Buzan,佐藤哲,田中美樹
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- 作者: ジェームズアレン,James Allen,坂本貢一
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- 作者: スペンサージョンソン,Spencer Johnson,門田美鈴
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- 作者: 本田直之
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勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践
- 作者: 勝間和代
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- 作者: 幸村誠
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- 作者: 幸村誠
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全部で13冊買った。きっかり1万円ポッキリ!!
定価で買うと、1600+2200+1260+880+1365+1600+600*7=13105円
まぁ3000円ほどしか節約できてないけど、3000円あればまた数冊買えるしね。
で、なぜか知らないけど実用書と漫画、おなじ本が1冊ずつダブって入ってた。返却してもぜんぜんイイんだけど手間を考えると面倒なのでたぶんしない。まぁミスだろうけど太っ腹!
11時ぐらいに届いて、漫画はもう全部読んでしまったので次は何を読もうかなぁっと思案中。
で、今回はちょっとマインドマップとやらを試してみようと思っている。前々から試してみようと思っていたけどなにゃら胡散臭くてやったことがなかった。もっとマイナーだったときにはやりたい!って思っていたんだけど、有名になってくるとなんだか流行りモノに飛びついているだけに思えてしまって、余計に距離を置いていた。天邪鬼。
だけど、id:higeponさんが
正直 マインドマップ を馬鹿にしていた。何で皆あのようなものに踊らされているのかと。それは間違いだった。
マインドマップは、本を読み、理解し、頭に記憶するのを大いに助けてくれる。
特に「イメージ(絵)と記憶」「キーワードと記憶」の2つの効果に関しては完全になめていた。まさに「これはすごい」のひと言。
マインドマップには正しい描き方がある。(中心イメージの定め方、色の使い方など)。関連書が多いが本家のザ・マインドマップを読むのが一番良いと思う。
読んだ本をマインドマップにする方法も書かれている。
と言ってるのみたし、とりあえずやってみようと思っている。なんだかこの頃本を読んでも頭の中で整理・記憶する力が弱まっている気がするし。ただ、「頭がよくなる本」っていう題名はどうにかならんかな。この題名のせいで絶対売り上げ落ちてると思うんだけど。特に自意識が過剰な人は、余計にとっつきにくいというか本屋で手にとって読んでるのさえ恥ずかしいと思うんだが。
とりあえずは、自分自身の勉強法やらをすこし考えなおしてみたいと思っている。私は大学受験時にもあまり勉強をしなかったので、勉強法やらを意識したことがない。そういった方法論を自分で意識して工夫してこなかった。勉強でもスポーツでも意識して工夫するのとしないのとでは、たぶん効果も楽しさも変わってくるはず。特に工夫して得られる楽しさの方は、年をとればとるほど大きくなっていきそう。
ドリルを売るには穴を売れ
- 作者: 佐藤義典
- 出版社/メーカー: 青春出版社
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【目次】
はじめに
序章:"マーケティング"脳を鍛える
マーケティングは身の回りで起こっている
「買い手」の反対側には必ず「売り手」がいる
マーケティング脳とは何か?
知っておくべきたった4つの理論
サブストーリー:プロローグ 宣告
第1章:あなたは何を売っているのか ― ベネフィット
顧客にとっての「価値」から考える
価値の不等号を維持する
「マーケティング部」だけがマーケティングするわけではない
顧客にとっての価値=ベネフィット
機能的ベネフィットと情緒的ベネフィット
売れている商品は価値が高い
価値の源は人間の3大欲求
顧客は「欲求充足」を買う
サブストーリー:PART1 屈辱
第2章:誰があなたの商品を買ってくれるのか? ― セグメンテーションとターゲット
分けてから狙う、狙うために分ける
欲求は人によって違う
どのように顧客を分ければいいのか
心理的セグメンテーションとは
ベネフィットで分けるセグメンテーション
ふたつのセグメンテーションをつなげる
「狙う」こととは「絞る」こと
絞らなければ誰にも売れない
サブストーリー:PART2 奮闘
第3章:あなたの商品でなければならない理由をつくる ― 差別化
顧客に業界の垣根はない
競合より高い価値を提供すること
3つの差別化戦略とは何か?
差別化軸は必ずどれかに絞る
ターゲット顧客と差別化軸は連動する
サブストーリー:PART3 希望
第4章:どのようにして価値を届けるのか ― 4P
価値を実現し対価をいただく4P
野菜ジュースで考える4P
1 どんな価値を売るのか? ― 製品・サービス(Product)
製品・サービスがどんな価値を実現するのか考える
2 価値を伝えて買ってもらうための方策 ― 広告・販促(Promotion)
広告で差別化ポイントを訴える
販促とは購買を促進する仕組み
3 どこで買ってもらうか ― 販路・チャネル(Place)
4 どれだけの対価を受け取るか ― 価格(Price)4Pの一貫性が重要
差別化戦略と4Pはどう関係するか?
サブストーリー:PART4 確信
第5章:強い戦略は美しい
東京ディズニーリゾートの収益モデル
4Pから見る東京ディズニーリゾート
どのように対価を受け取っているのか?
重要なのは戦略の流れるような美しさ
サブストーリー:PART5 決着
おわりに
この本は題名買いした本。というのもid:kaz_atakaという、密かに勝手に尊敬している人が
レビット先生の、「消費者はドリルが欲しいんじゃなくて穴が欲しいんだ」という話は本当に鮮烈で、このような領域に入ったばかりの頃、僕の頭をがーんとしたものでした。
って言ってて*1、なんてこった、題名がそのまんまじゃないか。これは買わなきゃならん。中古の漫画を大人買いしてやる・・・ヌフフ、なんて考えてる場合じゃない。そんな暇があればこの本を新品でアマゾンをポチっとするべきだ、と思って買った本。
また本書とは関係ないですが、現在、kaz_atakaさんは
ちょっとまとまった書き物を書こうとしていて(他では書いてありそうで書いてない、きっと多くの人に役に立つ内容デス!)、仕事の忙しさもあり、なかなか進まないので、腰を据えて一気にかいてしまうことにしました。
と言ってられるんで*2ひじょーーーに楽しみにしてるところです。
さて、本書を読んだのは少し前。確か就活時に、合間をぬって読み2日ぐらいで読み終わったと思う。すぐに読めてしまう本。
感想を端的に述べると、自分の中に1つ視点が増えたと思える本、買ってよかったと思える本。
どんな視点が増えたかっていうと、「価値」を提供する、という視点。
就活なんかをしてても「価値」を提供する、なんていう鼻持ちならない言葉を、もうほんとにうんざりするほど聞く。「ほ〜んと、いやになっちゃうんだよね、そんな薄っぺらい言葉は」なんて思ってしまうこともあったりした気もする。そのくせ、エントリーシートには「顧客に対して価値を云々、えっへん。」みたいなことを書いたが・・・。とにかく、「価値」を提供するということは、別に格好をつけていってるわけでもなく、本気で言ってるんだということがわかった。
具体例を本書のサブストーリーから抜粋してみる。
本書のサブストーリーのあらすじは、主人公である売多真子が突然社長室に呼び出され、赤字を垂れ流しているイタリアンレストランを2ヶ月でどうにかしてみろ、と宣告されたところから始まる。先輩社員の大久保博は真子にこの案件を一任する。途方にくれる真子だったが、従兄弟でMBA持ちのコンサルタントである、売多勝がいた。この助っ人に相談をしながら、マーケティングについて学び、改善案をひねり出していく話。
抜粋部分はちょっとオシャレなイタリアンで勝とミーティングをしている場面。
「こうしてみると、わたしたち、デートしてるみたいですね」
「誰が楽しくってオマエと……」
「ひっどーい。これでも結構モテるのに…。今は彼氏いませんけど…」
「真子の私生活なんて聞いてねーよ。いいからなんでイタリアンレストランを選ぶのか考えろ」
「あ、そうか、…デート?」
「それから?」
「不倫?」
近くのテーブルにいると年の差カップルを見ながら、小さな声で答えた。
「まあそうだけど、そりゃデートと同じだ。他には?」
「女の子同士で来てる人も多いですよね。たぶん、表参道でゴハンを食べてる、っていうのがいいんですよ。オシャレっぽくって。」
「おう、真子にしては上出来な答だ」
「え、いいの?冗談だったのに」
「だってそれがホンネだろ。真子だって、初めてのデートだったら、焼肉より表参道のイタリアンとかフレンチがいいだろ」
「じゃあ、勝さん、この店にしたのは私を意識してるんだ。もー、真子困っちゃう♪」
「や、め、ろ。人聞きの悪い」
「しつれいですねー、あとは…、会社の接待とかもありますよね…」
「わかったか?」
「…わかった!お客さんは料理を食べにくるんじゃなくて、不倫にくるんだ!」
真子が声をあげると、周りの客が一斉に真子に視線を浴びせた。あわてて口をおさえたがすでに遅く、勝が苦虫をかみつぶしたような顔で真子をにらんでいた。
「は、ばかもの…。でも正解だ」
優雅なひと時を買う、みたいなことはわかってたつもりだったけど、まさにこれが価値を買うってことだと腑に落ちた。つまり、この場合だったら、お客さんは不倫やデートの成功率を挙げる(と思われる)価値も買っているわけだ。言葉で書くと当たり前なんだけど、今までよりもずっとストンっと理解できた感じがした。女の子とイタリアンを2人っきりで食べるなんて、まっっったく身近じゃないってかしたことないけど、腑に落ちた。人によって腑に落ちたと感じれる具体例は違うだろうけど、この本では料理店のマーケティングを通して伝えてくれる。
ちなみに小説のさわりを著者のHPで公開しているのでリンクを。pdfなので少しスペックの低いPCの方は注意を。
本のさわり部分PDF
さて、この小説部分はあくまで「サブ」ストーリーなので本書のメインはマーケティングの基礎理論。
その基礎理論は本書では大きく4つ取り上げている。それが第1章から第4章のメインテーマとなっている
- ベネフィット
- セグメンテーション
- 差別化
- 4P
だ。
この理論の詳細なんかは私が解説してもしょうがないので、はしょるが*3特に意識しておきたいと思った部分をまとめておく。
顧客が得る価値(ベネフィット) > 顧客が払う対価マーケティングとは、この価値の不等号を維持・拡大するためのすべての行為をさす。
また価値には機能的な価値、情緒的な価値の2つがある。前述のイタリアンレストランで提供している価値は情緒的な価値にあたる。
価値というと聞こえは良いが、価値には対応する欲求があり、この欲求を満たすものが価値を持つ。その欲求には自己欲求、社会欲求、生存欲求の3つ があると著者は説く。これはよくあるマズローの5段階欲求説を基にした考えだ。
しかし、欲求は人によって異なる。そのため別個に対応していく必要が生じる。この別個に対応するために分けるのがセグメンテーションであり、セグメンテーションをするのは別個に対応、つまり狙いをつけるからするものである。そのため、狙いとセグメンテーションは別々の考えのもとでおこなってはいけない。
その分け方だが、よくあるのが「30代」の「男性」などだ。これの利点はもれなくダブり無くわけられることだ。*4
他にも心理的セグメンテーションや、ベネフィット別セグメンテーションなどがある。顧客にベネフィットを提供するという意味から考えるとベネフィット別のセグメンテーションでわけて狙っていく、というのが商品の開発的にも好ましいが、このベネフィット別のセグメンテーションは如何せん難しいのが難点である。
またid:kaz_atakaのブログで読んだ、「オケージョン」別のセグメンテーションという考え方もすでに頭に入っている、つもり。これについては、市場における原子を。
このように狙いを定めて、顧客の前に出しても他の商品も同様に狙いを定めてくる。このときに差別化が必要となってくる。
このときの軸として、手軽軸・商品軸・密着軸の3つを提供している。3という数字が多いのは、私のような人のためのいつもの理由。
他にも色々と読みながらドックイヤー*5をつけていった。例えば販促に関すること。クーポンはもちろん販促だけど、無料にするようなクーポンは安易。サンプリングをかねるようなクーポンにしろ、などなど。
ただ、あまり書き連ねても仕方が無いので最後にまたサブストーリーから抜粋をする。
真子は、イタリアンレストランの企画を考えていくうちに、なにもイタリアンレストランのことを知らないことに気づき現場に出て、そして実際に本場イタリアのシチリアに行くことにした。(店員の望と2人で)数日間だが、そこにいたレイさんから色々学びを見にいって企画に活かそうとした。
数日間であったが、レイの案内のおかげで2人は濃密な時間を過ごした。(中略)余韻にひたるヒマもなく、帰りの飛行機でも真子は必死に企画書を書いていった。
だがその筆の進みは驚くほど速く、企画書はすいすいと仕上がった。今までも必死に考えてはいたのだが、それがいかに「机上の考え」だったかを思い知らされた。隣に座る望と話していると、あれだけ考えても出なかったアイデアが魔法のようにわいてきた。
とある。結局は現場であったり、本場であったりを知ることの大切さがマーケティング、つまり価値の不等号を維持・拡大するためには大きな要因となってくるということだ。マーケティングは買う側に対しての売る側の行為であり、売るためには買う側に近寄らなければ売れない、声も手も届かないということだ。当たり前だけど、それが一番大切なんだと思う。しかしただ闇雲に買う側に近寄って、埋もれてしまってもいけない。そのためのマーケティング理論であると思う。現場的な経験と理論の補完がマーケティングでは物凄く重要になってくるのだと思う。
さて、長々と書いたがこの本を読もうと思った理由がもう1つある。それは私の就職先としてマーケティングを専門とする比較的小さな会社が候補としてあったからだ。そこに就職して、現場に出るためにもある程度体系的な理論に目を通しておきたいと思った、ということだ。
というのも、どうやら私は初めての経験や初めて得た知識を十分に体系化できないようだからだ。これは致命的なことだとは分かっているが、うまく体系化できない。これは研究をしていてそう感じた。自分が行っている研究は、萌芽的研究であり、まだまったく体系化されていないのだが、これを自分で少しでも体系化していきながら考えないとまったく実らない。しかし私はどうやらその力に乏しい。なぜ、今までそのことに気づかなかったのかというと、例えば今まで勉強してきた数学や物理なんていうものは先人が体系化してくれており、中高で学ぶカリキュラムも体系化されたものを学んでいくカリキュラムをこなしていただけだから感じることがなかった。学校のカリキュラムはもちろん問題も抱えているが、うまく段階を踏んでいってくれるという意味では本当によくできたカリキュラムだ。
さて、話を戻すと、研究についてももちろん頑張るつもりでいるが、自分が食っていく職業の候補として考えていたマーケティングは、そんなヒマもないだろうし、そもそもすでに先人が体系化してくれているものがあるならそれをまず見ようと考えて、読んでみたわけだ。
実際に読んでみて、頭の中にマーケティングが体系化されたかというと、まだまだその感覚はない。それは基礎的な本であり、理論としての絶対量が少ないことと、演習的なことをしていないからだろう。演習とは今回読んだ本で得た視点、価値を提供するという視点を持って世の中の製品を見ていくこと。これは日常に溢れている。そして、これは製品だけではなくて、サービスや、ゆくゆくは人の行動にも適用できる。
そういう意味で、マーケティングの分野で働かないことに決めた今後の私にとっても
本から得た知識、視点、今後視点によって得ていくであろう価値の総和 >>> 税込み1500円
だったと思う。
*1:http://d.hatena.ne.jp/kaz_ataka/20080615/1213538276
*2:http://d.hatena.ne.jp/kaz_ataka/20090402/1238623155
*3:面倒とかじゃない
*5:7倍の方じゃなくて本の隅を折る方
地下室の手記
- 作者: ドストエフスキー,安岡治子
- 出版社/メーカー: 光文社
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【目次】
1 地下室
2 ぼた雪に寄せて
- 読もうと思ったきっかけ、目的
何か陰鬱な気分だったので、その気分にあわせたかったんだと思う。
もしくは浸りたかったというか。
- 目的に対してこの本の評価
もちろんそんな気持ちにもなれたが、そんなもので収まるもんではなかった。
- 本としての評価
もう一度、時間をおいてから読み直してみたい。
今はただ、いくつか引用を残しておく。
以下、本文中より抜粋。
俺は病んでいる……。ねじけた根性の男だ。人好きがしない男だ。どうやら肝臓を痛めているらしい。
(1ページ)
俺は意地悪な人間になれなかっただけじゃない。何者にも――意地悪にも、善良にも、てのつけられないろくでなしにも、正直者にも、英雄にも、虫けらにさえ、なりえなかった。今じゃとうおう、俺の居場所と思い定めたどん詰まりのすみっこに引き籠もったきり、「賢い人間ならおよそ、まともな何者かになれるはずがない、何者かになりうるのは愚か者だけだ」という、ねじけた愚にもつかない慰めを口にしては、己をなぶりものにしている。
(12-13ページ)
たとえ人間のしていることと言えば、ただ一つ、二、二が四を捜し求めることであり、そのためには大洋を渡り生命を犠牲にすることも厭わないとしても、実際にそれを見つけ出してしまうことは、確かになぜか恐れているのだ。見つけ出してしまったら、もう何もすることがなくなると察しているからだ。
(68ページ)
あんた方は、永久に揺るぎない水晶宮、こっそりアカンベエと舌を突き出したり、ひそかに手で侮辱のしるしを作ってみせたりすることが許されない水晶宮の存在を信じている。俺はこの建物を怖れているが、その理由はもしかすると、これが水晶で出来た揺るぎない建物であり、こっそりとでさえも、これに対して舌を突き出したりできないからかもしれない。
(71ページ)
とどのつまりは、君たち、なにもしないほうがいいのさ!意識的な無気力のほうがマシだ!だから、地下室、万歳!というわけである。
(75ページ)
ある晩、一軒の居酒屋のそばを通りかかったとき、灯りのついた窓の中をふと見ると、ビリヤード台の周りで、キューを持った客たちが、つかみ合いの喧嘩をしたあげく、一人の男を窓の外にほっぽり出した。他のときなら、俺は、実に不愉快極まりない気分になっただろう。ところがこの時は、不意に、このほっぽり出された男が羨ましくてたまらなくなったのだ。
俺は自分の話し方が、ぎくしゃくと強張っており、本からの受け売りの妙に凝った言葉だということ、まさに≪まるで本を読んでいるみたい≫にしか、話せないことは知っていた。しかし俺は、そんなことは気にしていなかった。こんな話し方でも人に通じるはずだし、むしろこの書物臭いところがいっそう効果的に働くはずだと感じていた。ところが今、いざその効果が出てみると、これは不意に怖気づいた。いまだかつて一度として、本当に一度として、これほどの絶望を目の当たりにしたことはなかったからだ。女はうつぶせに・・・
(207-208ページ)
俺は、ふとこんなふうに考えたものだ。<なんてわずかな言葉で、本当にわずかな牧歌詩で(しかもその牧歌詩たるや、偽りの、本からの引き写しの、作り物なのに)、人の心をたちまち己の思い通りのほうへ向けることができるものか!これこそが、処女性というものか!新鮮な大地というものなのだ!>
(221ページ)
「私、あそこから……完全に……出てしまいたいの」彼女は、なんとか沈黙を破ろうとして話し始めたのだが、可哀相に!まさにこんな話題だけは、ただでさえ馬鹿げたこんな瞬間に、ただでさえ愚か者の俺のような男に切り出してはいけなかったのだ。俺は彼女の気の利かなさ、不必要な率直さが哀れで、思わず心が疼きだしたほどだ。しかし、なにか醜悪なものが、たちまち俺の中でその哀れみを跡形もなく押し潰してしまった。のみならず、もっとやってやれ、なにもかも、どうにでもなるがいい!と俺を焚き付けたのだった。さらに五分が過ぎた。
(241ページ)
とにかく彼女には、消えてもらいたかった。俺は、≪平穏無事≫を欲していたのだ。不慣れな≪生きた生活≫にすっかり押し潰されて、息をすることさえ、苦しくなってしまったのである。
ところが、さらに数分が経ったのに、彼女は、一向に立ち上がる気配もなく、まるで気を失っているかのようだった、俺は恥知らずにも、そっと衝立をノックして、催促してみた……。彼女は、不意に身震いすると、その場から跳ね起き、慌てて自分のスカーフだの帽子だの毛皮のコートだのを掻き集めにかかった。まる俺の元からどこかへ逃げ出すかのように……。二分後、彼女は衝立の陰からゆっくりと姿を現すと、辛そうな眼で俺を見た。俺は憎々しげににやりと笑ってみせたが、それも無理やり、体裁のために、取り繕った笑いだった。それから彼女の視線から顔を背けてしまった。
「さようなら」彼女は、戸口に向かいながら、そう言った。
俺は、不意に彼女に駆け寄ると、その手を掴み、握った手を開かせ、何かを押し込み……それからまた握らせた。その後すぐさま、くるりと背を向けると、慌てて部屋の別の隅に飛び退いた。少なくとも、俺はなにも目に入れたくなったのだ。
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俺たちは、人間であることさえも――本物の自分固有の肉体と血液を持った人間であることさえも、重荷に感じている始末だ。これを恥じて、屈辱であるとみなし、なにやらいまだかつて存在したことのない普遍的な人間なるものになろうとしている。俺たちは死産の児だ。もうだいぶ前から、生きた親たちから生まれているわけではないし、それがますます自分で気に入りつつある。いよいよ親しみが増してきたわけだ。じきになんとかして理念から生まれる方法も考えつくことだろう。しかし、もうたくさんだ。もうこれ以上、≪地下室から≫描き続けたくはない……。
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